BOOK どのようにして新しいアイデアは生まれるか

「創造性と脳システム どのようにして新しいアイデアは生まれるか」エルコノン・ゴールドバーグ著 新曜社(読後感想)

 ビジネスで脳科学の重要性が高まっているが、イノベーションや創造性を脳の観点から分析した本の感想を紹介したい。著者のエルコノン・ゴールドバーグ氏はニューヨーク大学の医学部神経学臨床教授(本書出版時)。神経心理学や認知神経心理学の専門家で臨床に携わる人物だ。
 本書は脳科学の専門的用語も多く難解と感じる部分もあったが、これまで言われてきたような創造性やイノベーションに関する一般的な事柄を脳の観点から再認識するという意味で勉強になった。
 本書では創造性には「前頭前野の活性と低活性」が重要だということが述べられている。前頭前野とは人間の「おでこ」の後に位置し、思考やアイデアを生み出す働きを担っていると言われているが、この部分のONとOFF状態の往来の中でアイデアが創出されると解釈した。
 著者が主張するように革新的なアイデア創出にはまず継続的な研鑽、地道な努力の蓄積(ON)が必要だ。その前提で非日常的空間や時間など(OFF)の交差の中から新しい考えが生まれるという趣旨が書かれている。簡単に言えばアイデア創出には考え続ける時間と自分を解放する(リラックス)時間の両方が必要で、それらを行き来する中で新しいアイデアが生まれるということだろう。創造性を発揮するためには仕事だけでなく休むこと(休み方)の重要性、非日常的な空間、時間、人との接点の必要性などを脳科学の観点から再認識する機会になった。
 本書は脳システムを扱う専門書で読むのに多少の時間と労力が必要だったが、イノベーションや創造性を多角的(科学的に)に捉えたい方にとっては刺激を受ける本かもしれない。

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