現場のエース社員が採用担当者となる
IT企業のアシストはソフトウエアで課題を解決する「パッケージインテグレーター」だ。同社はオープンワーク(株)発表の「新卒で入社して良かった会社ランキング2019」で7位「働きがいのある企業ランキング2020」でも10位にランクインする企業だが、2015年から採用改革(採用イノベーション)に取り組んでいる。
従来の人事主導の採用ではなく、営業や技術部門のトップ人材を引き抜き、専任として2年間、採用業務に従事する。現場のエース社員が採用を行うことで従来では見られなかった多彩な学生が入社するようになっている。「人事は全体最適を考えて採用を行う部分があると思いますが、現場の人間は時に個別最適だとしても魅力的な人材を選ぶケースがあります。そのため弊社へ入社する人材の多様性は非常に上がったと感じています」経営企画部 企画2部 人事企画課石井雄輔氏
この採用方法の導入背景を同部 人事企画課長の渡辺美和氏は次のように説明する。「人事が行う採用はどうしても学生に対して“仕事のリアル”が伝えきれないというジレンマがありました。学生の方にアシストの魅力を最大限理解してもらうためには現場のトップ社員に採用に入ってもらいたいとの思いがありました。」渡辺氏
多様な人材を採用することはイノベーションやダイバーシティ経営にもつながるが、営業や技術といった現場のエース社員を2年間も採用担当にアサインするのは容易ではない。実際に同社でもこの採用方法の導入時は現場が混乱し、少なからず反発もあったようだ。営業現場は数値目標がある会社が多いため、トップ営業が抜ける影響は大きい。同社でも売上減を懸念する営業現場のマネジャーからこの仕組みに納得がいかず社長に直訴することもあったが、「アシストは100年企業を続く企業を目指している。そのためには現場のエース社員が採用を担当することの重要性を理解してほしい」と諭された。しかし採用チームに抜擢された現場のエース社員たちの頑張りや多様な人材の確保といった効果が見られることで社内でも理解されていった。現場のトップ社員と人事が融合するハイブリッド的な採用はやイノベーションやダイバーシティなどの効果が期待され企業の持続的成長につながると考える